Airflow and Valley

羽田空港内の飲食事業者への内装空間の提案。飲食事業者は機内食事業も手がけていることから、店内でも食べることができる機内食の開発を軸に、「旅程に組み込まれる空間デザイン」を考えた。機内食はIATA(国際航空運送協会)の規定や、出発着前に食事を多く摂ると機内食が十分食べられなくる、機内食を十分食べた事で到着予定地での食事のリズムを壊し体調に影響が出るなどのケースへの配慮を要し、規定の時間毎に食を提供しなければならないなど細かな配慮が求められる。そのような食に対する知識も食育として気軽に学びながら、見送る人々や出発前のひとときを過ごせるような事業性を考慮し、空港の飲食店とはどのようなスタイルがよいのかまでを提案した。

空間は「気流の制御」によってデザインされている。自然界では気流は刻一刻と変化する。気象学では「等圧線」で可視化される。空間では天井面は空であり、「等圧線のスリット」として刻まれている。このスリットは客席のゾーンを柔らかく暗示する「間仕切り」として機能し、団体客から個別客まで対応できる可変性のあるゾーニングができる。スリットにはLED照明とエアカーテンが仕込まれ、空気の間仕切りとなっている。食事の匂いが店内で混じらないような空調による制御が可能で、エアカーテンメーカーと天井高さに対する吹き出し速度やカーテンとしての気流の厚みや不快なドラフトが発生しないよう解析をしてもらった。天井面から降下する気流は床面で吸い込み、各ゾーンに対流をつくらないような計画となっている。

見えない間仕切りのままでは審査員も客も意味がわからないはずなので、空気を可視化させる方法として、見えない中廊下を計画し、木製の扉をゾーンごとにぽんと置いた。扉の両脇は見えないエアカーテンで常時仕切られているが扉がないほうがコンセプトをピュアに体現できたであろう。

「見える/見えない」という気流の存在と旅程の関係を内装デザインに取り入れ、窓から見える空とフライトという高揚感をリンクできるような空間を目指した。

計画年:2009
場所:空港
用途:軽飲食施設
規模:220sqm
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