Philosophy

これからの建築-空間の連帯へ

社会と響き合う空間へ

現代の都市は、大量消費の内向的な建築群によって形作られたため、変化し続ける社会に対して持続可能な関係を築き直すことが求められています。しかし、3.11の震災以降、復興が進む中で、また同じ風景が再現される現実を目の当たりにし、建築のあり方について再考する必要を強く感じました。少子高齢化や空き家問題、都市のストックが活用されず、単なる維持に留まる状況の中で、建築は「これまで」と違う「これから」の姿を模索しなければなりません。 建築の役目は空間をつくることだけではありません。建築は都市に新しい関係性を生み出し、人々の活動を編み込むものと考えます。これからの建築は、地域性や世代の変化とともに柔軟に圧縮や拡張をおこない、都市との関わり方を使用者とともに考え、進化させられる結晶といえます。その環境の総体としての都市、そして都市ごとの呼吸を形づくる建築。そのあり方を探求することで、社会に寄り添う柔軟な空間を創り出したいと考えます。 都市は単なる建物の集合ではなく、世代が交代し、情報が流動し、社会が変容し続ける場です。しかし、これまでの建築は、都市の新陳代謝と連携せず、硬直した空間が大量にストックされる状況を生み出してしまいました。少子高齢化が進む中で、必要な空間がどのように都市と結びつき、柔軟に使われるべきか――この問いに応答する建築を提案したいと考えています。 新築を検討する際、従来の形式に囚われることで、未来の活路が見えなくなることがあります。例えば住まいでは、立派なガレージを作っても、将来それを使う人が現れるとは限らない。2階にリビングを設けても、年齢を重ねたときに昇り降りが難しくなるかもしれない。しかし、ガレージを街とつながるアウトドアリビングとして設計したり、外階段を設置することで将来的に賃貸へと活用できる可能性を残しておけば、不動産としての柔軟性が生まれます。都市と空間の連携を考え、持続的に使い倒せる柔軟な建築を提供することで、「これからの建築」を形にしていきたいと考えています。 お客様の「これから」、社会情勢の「これから」、地球環境の「これから」「これまで」と違った「これから」を真剣に考えることで残したいものを真剣に選択し、次世代に繋げるお手伝いをする建築設計事務所です。

Holistic Architectureとは

「これからの建築」の掛り代

2025年から省エネ性能基準を満たすことが義務になりました。家の温熱性能はZEHが標準になっていきます。基準以下の住まいを売りに出そうとしても売却益は出にくくなることが予想されています。そこは、機械的に向上を図っていけば良いと思っています。木造は揺れることが前提であり、軸組をパネルで塞いで固めていく隙間が多い構造のため、気密・断熱性を高めるのは材料密度が高く意外と室温変化が少ないRC造より大切になるのは必然です。

性能だけを満たせても良い建築はできない

しかし、断熱性能を高めても居心地まで比例するかというと、そうでもないというご経験があるかもしれません。それは性能以外の視覚的な空間の作り方によるかもしれないし、素材や色彩、照明のせいかもしれません。最も身体に訴求する家具のチョイスが悪いだけかもしれないし、お気に入りの家具なのにレイアウトが悪いことが直接的な要因かもしれません。そこに気が付けないまま快適さを損ねて過ごしているケースもあるかもしれません。

着眼大局、着手小局

構造や設備含めて外観としての纏まりと環境順応性を獲得しながら、暮らしに沿った、しかも建ったあとの活路を想定しながら、それぞれの計画の調停を行うことで造られた建築を《ホリスティック・アーキテクチャ》と定義しています。「全人的建築」と訳せ小難しく聞こえてしまいますが、「使用者がだれであろうと使いやすい環境を提供する建築」のことを指します。もう少し踏み込めば、空間を全体的に捉え、身体的、精神的、感情的なニーズを満たし、生活全体を考慮した設計を特徴とする建築です。

変化する環境の中でも変わらないこと大切にする

よく、「インクルーシブデザイン」という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、建築はもともと包括性のある存在なのでインクルーシブを意識することは大切ですが、目指すということではなく、はじめからあらゆる使用者を想定し、調停し、そして統合することを目標としたいものです。とても当たり前のことのように聞こえるでしょうが、当たり前がままならない建築も多いように感じる現代だからこそ大切にしたいコンセプトだと感じています。

流行が常に先端とは限らない

また、参考として次のようなデザイン思想もあります。
人間や動物は自然界の一部を「好む」性質を先天的にもつのではないかとする「バイオフィリア」仮説に基づいて、自然とのつながりを重視した「バイオフィリックデザイン」という思想・手法です。
建築に樹木や植物を組み込み人間の健康と幸福を促進する空間設計も一部で増えています。しかし、過度に緑化したばかりに躯体費や維持管理費が増えてしまうということも起こり得ます。リアリストはそこを気にします。
逆に人間や動物は自然界の一部を「嫌う」性質を先天的にもつのではないかとする「バイオフォビア」仮説もあります。
都市生活者であっても自然との関わりを欲することはあります、あるいは自然に嫌気を差して都市生活を享受したい人もいるでしょう。
都市生活が嫌で自然の中で暮らす人もいるでしょう。生活者の自然への嗜好度合いも一定とは言えず、変化するものと捉えつつ、都市であろうと自然が多いまちであろうと、どのような関わり方が望ましいのかを丁寧に話し合うことも大切です。

多面的に射程の長い思考を心がける

わたしたちは、沢山の夢や理想、思想、物質に電脳的にも囲まれすぎたため、特定の考え方だけを受け入れるという環境を選ぶことが難しい世界で生活しています。
そのような中で作られる建築もまたそのような運命を辿っています。趣味趣向は更に細分化され複雑になるかもしれません。その分だけ意思の分断も進むかもしれない。
要望主からの要望に沿って計画したとして、ある文化的需要には応えられても、人が活動する空間として心理的需要に応えられず恐怖や息苦しさ、圧迫感などを覚えたり、あるいは要求条件通りに作ったにもかかわらず社会的需要に対して過不足や批判が生じるケースもあります。巨大建築や公共事業で起こりがちです。それでも本当によく練られた建築というのもあるわけで、そういう建築は工学的・美学的・倫理的にも融合が上手で、そのような建築を《Holistic Architecture》と呼び称賛し、目標とします。

ideas of design

当事務所では、検討段階から様々なレベルでプロジェクトに必要なタグ付けとその相互関連付けを行いながら、建築としてのまとまりがホリスティックであるかを常にフィードバックするよう努めています。工法や素材の吟味にはじまり、結果として建ち現れる空間の新規性の評価に慢心することなく、既存の地域特性や産業、文化的利点、施主の管理意欲なども熟考し、その建築の心理的・社会的意義や地域への貢献度、長期的な維持管理目標、ホスピタリティのような良きユーザー体験まで総合的に設計・評価する態度を備えた建築《Holistic Architecture=これからの建築》をご提案致します。

こ れ か ら の 建 築

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