回廊のある住まい

これから子育てをされる夫婦を対象とした住まい。居場所をつなぐ/わける、見通す、住まいは「重ねあわせて使える」のがよいと考える。まず、小さく集まれる規模の部屋の集合を用意した。部屋にある収納や机などの家具的要素を廊下に出してみる。それらを数珠状につなげると、回廊のある空間がうまれる。これにより通過するだけになりがちな廊下は部屋と重なり活動を支援する空間へとうまれ変わる。そして、部屋同士を窓でつなげることで、声をかけあえる機会が増えるような計画とした。空間を重ねあわせて使うことで子供の成長を安心してみまもれる場所、気配りしあいながら夫婦が成長できる住まいを目指した。

空間を重ね合わせる仕組み

最低限の居場所と機能的に必要な家具(収納や机)を動線を介して空間の単位をつくる。スケルトンの形状、方位などの環境に配慮して各単位を数珠つなぎにして回廊をつくる。回廊の内側は純粋なハコとしての空間。外側は各室に必要なしつらえが施されている空間となる。一般的に廊下は廊下しか使いみちがないのがマンションだが、居場所と動線を分離しつつも、家具のあるゾーンまで居場所を拡張するのがこの案の特徴であり、生活の連続感や濃淡がうまれるようなつくりかたを目指している。同時に回廊の内側の部屋同士を窓でつなぐことで気配を感じられる視認性のよい空間ができあがった。

つなぐ/わける仕掛け

寝室は回転する可動間仕切りによって2分割できる。授乳期にはベビーベッドが置けるワンルームで安心して授乳もできる環境。学童期には引戸によって窓際のスペースと一体的に利用できるプライベートな空間になる。窓際には連続的に書斎や家事コーナーを設けることで、適度な部屋との距離感を保ちつつお互いの気配が感じられる、ゆるやかな生活空間をつくることができる。

計画年:2010
場所:東京都
用途:分譲住宅内装
規模:69.83sqm
構造:鉄筋コンクリート造