新規Webデザイン会社のオフィス。渋谷の閑静なエリアにある築約40年のRC造賃貸物件の一室を賃借。ほぼきれいにリフォームされたワンルームだったため、手を入れて良い場所は限定的だった。条件は、和が感じられるテイスト。欲しいのは「作業テーブル」と書類関係の「収納家具」、そして「照明」の増設だった。それらのレイアウトでいかに広く見せるかというテーマのもと進めた。
テーブルは奥行きが浅めのスチール製。天板は濃灰を混ぜたモルタルを羊羹のように流し込んだ金ゴテ仕上げとした。天板モルタルの肌理は、既存合板床のクリアラッカーの艶や、色調とのバランスなど、既にあるマテリアルの仕上げに配慮しながら、馴染ませすぎないバランスを目指した。また、玄関脇に附帯している「ミニキッチン」は、ワークスペースのあり方として来客に見せるには心もとなかったため、あたらしい「黒い折戸」に収納し、壁として内装全体のバランスに寄与させた。折れ戸の側板は黒板となっている。窓際にはベンチを兼ねて、留め加工によるモノリシックな「木製可動収納」を2台設けた。ワークチェアを兼用させ、既存腰窓との関係性を補完させた。
また、壁面には本棚を取り付けるだけの余裕も許可も下りなかったこともあり。白い壁面を残して広さの印象度を増やす方向で、スチール製の「床置き式収納箱」を追加で設けた。上蓋は厚さ10mmのアクリル板を2枚重ね、中蓋はシナベニヤの二重構造となっており、普段使いではない書籍は中蓋を開け内部にしまっておく。中蓋の上には印刷物を中心としたアートワークを置き、アクリルの上蓋で額装することでディスプレイができるようになっている。収納内部はA4サイズまでは縦に収納できるスペースがある。アクリルの上は歩くことができ、玄関から奥の打合せスペースまでの道標と、作品を見ながら移動するという来客のための演出が施されている。5坪という小さな環境を丁寧に読み込み、最低限のしつらえで最大のCIデザインを試みた。
計画年:2009
場所:東京都渋谷区
用途オフィス改装
規模:17sqm