複数の円弧とそれらをつなぐ空間の構成によって作られた椅子。座面、背面、肘掛の各面は円弧の接点でかろうじてつながれつつ、各々の機能を満たす位置に配置される。同時に各面の隅部に生まれたこの椅子の特徴である三角形のような空間を円弧に合わせて曲面処理し、脚と一体化させ、各面に構造強度と椅子としての包まれる感覚を獲得させている。
木漏れ日のような安堵感、休息感や思索的な空間をイメージした。木漏れ日は枝や葉のこまやかな並列的集合がもたらす光の分布であり刻一刻と表情を変える。木漏れ日の下に立つと天の枝葉と地の木陰と光にはさまれ自然と一体になるような感覚になる。枝葉の重なりを美しいと思うこと、葉の重なりがつくりだす光の濃淡を美しいと思うこと、地面に落ちる影を美しいと思うこと、空気中の光のハレーションを美しいと思うこと、それらのどれひとつ欠如しても木漏れ日は成立しない。相補的な関係こそが日本の美意識の根底にあると思う。
計画年:2005
用途:椅子
規模:W550mm・D567mm・H840mm・SH420mm
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