
部屋の再構成──空間的アセンブラージュのスタディ
本作は、「部屋」という建築の最小単位を再考する試みである。
それはもはや静的な機能の器ではなく、より大きな空間システムの中で動的にふるまう構成要素となる。
空間を分節し、統合するという行為を通じて、部屋がどのように生成され、接続され、変容し得るかを探る。
中心にあるのは、一枚の連続する面。リボンのように折れ、曲がりながら空間を通り抜けていく。
異なる曲率と共通接線が織りなす一連のヒダは、空間を定義し、囲いながらも開く──透過性のある、うねるような境界面である。
その折り重なりの中から、コートヤードやインナーテラス、半屋外の領域が立ち現れ、それらと共存するかたちで、仮想的な外壁の外側には専有空間が広がる。
曲率や平面上の距離を操作することで、さまざまなサイズと性格を持つ部屋が生成される。
その結果、分節と連続が曖昧に混ざり合う空間が立ち上がる──隣接して見える部屋が実際には遠く、複数の部屋がひとつの空間体験として解け合うこともある。
このような曖昧さは、従来のnLDKに代表されるモジュール型住戸とは異なり、空間の序列や明確な動線を解体し、より開放的な居住構成を可能にする。
ここでは「隣接」という概念自体が再定義される。視覚的、物理的、心理的な距離がそれぞれに異なり、空間的な関係性が多層的に立ち上がる。
その構成は、グリッドではなく、地形のように──折り重なり、レイヤー化し、敷地全体へと広がっていく。
密集都市において、本スタディは住まい方自体を問い直す。
住戸の枠を越えて暮らしが敷地へとにじみ出す、新しい居住のかたち。
これは単なるプランではない。
部屋が出来事となり、しきいが誘いとなる、変化し続ける空間のためのフレームである。
計画年:2002
場所:未定
用途:共同住宅(コートヤード付き3住戸)
規模:156.25sqm
構造:鉄骨造
階数:地上1階(重層可能)