ソラノキャンバス

3.11東日本大震災の応急仮設住宅への環境改善支援。災害の度に必ず建設されるプレファブの仮設住宅は度々入居者や専門家からヒートブリッジ(熱橋)や結露、音の伝播など、多くの機能的問題が指摘され、その度に現場対応を行うという構造的欠陥がある。過去最大ともいえる供給数においても同じ現象が繰り返された。

仕様や供給システムにおける問題もあり、抜本的解決がなければ、個別の対処療法を都度強いられるわけだが、まず大量に建設されることを否定せず、与えられた住環境のどこに介入すれば生活環境が上向きになるかを前提に考えた。熱負荷の軽減、熱中症や孤立の回避、震災後の子供の情操などを踏まえたコミュニティの醸成を補完することを第一義として、キット化した可動式オーニングによる「木陰の空間」を考案し住棟間の通路に設置した。生まれた通路空間は閑散とした「ケ」から市場のような「ハレ」の場への空間の転化との評価も得られ、テンポラリー(=一時的)な空間装置として、改良されてでもこの手の仮設住宅では実装されるべき提案性を備えているものと自負する。

実施するにあたり、2週間滞在し、早期に現地入りしたNPO支援団体とつながりを求めた。NPOとともに住民へのヒアリングを実施し庇の要望を伺う。その後、学生有志を含めた現地調査、検討、プレテストを実施。8月にデモンストレーション、9月には追加設置を行った。また、当時遊び道具さえ少なかった中で、仮設に住まう子供たちに大きな白いテント生地に好きなだけ絵を描いてもらい、オーニングとして空に架け渡す「ソラニエガコウ!」という学童支援ワークショップを連動さた。コンパクトに折りたためるキット化は、改良の余地はあるものの、遠隔地からの運搬性やセルフビルド可能な施工性、設置後の保管・撤去のしやすさなどが考慮されている。特筆すべき点は外壁の既存ボルトを利用してねじ込むだけというシンプルな仕組みで、量産型プレファブならではの転用性、汎用性に着目して実施していることである。

計画年:2011.5~2011.9

場所:宮城県東松島市ひびき工業団地応急仮設住宅
用途:応急仮設住宅附属工作物
協同者:基真由美/M.A.D一級建築士事務所
協力者:鈴木宏亮/一級建築士事務所すずき、西寿雄/太陽工業株式会社、東京デザイナー学院有志
後援:太陽工業株式会社、株式会社トーヨーホーム

国際交流基金 海外巡回展「3.11東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」
パリ日本文化会館(仏)~20カ国37都市