OSK

広義の仙台平野沿岸に見られる「居久根」の配置の考えを建築的に翻訳した平屋建ての住まい。居久根の存在意義が見直されて久しいが、高齢化する場合、屋敷林の手入れもままならなくなり、伐採することもあるという。このような地域における建築のあり方としては、上手に自然を翻訳しなおし、地域の防災・防風林的機能を代替・維持するというのもひとつの「地域の課題解決の方法」である。意識を敷地内だけに縛るのではなく、近隣や地域全体にまで拡げることで、その場所に建築することの意義が見えてくることは少なくはない。

プログラムは、介護・介助・リハビリテーション/趣味と地域の拠点/分家における継承・非継承/休耕地の運用/震災後の暮らし/施主支給の木材調達の管理など「極めて多層的」である。基本事項として、ケアを要する家は、広義に縮小社会といっても、具体的に容易に縮小でき得るものではない。ケアに係る空間は削れないどころか変化する身体への冗長性やプライバシーを設えておく必要がある。

まず、車いす利用者の在宅ケアを第一の目的としたゆるやかな一室空間としての「主屋」を考え、地域住民と交流するための趣味室と支援する家族のための「ちいさな門屋」を併設させている。将来的に減築も容易な構成をとっている。主屋と門屋のあいだには心地よいヒューマンスケールをもった静穏な北中庭が設けられ、それぞれの行為をつなぐ。さらに、門屋はこの地域の厳しい季節風を和らげ、北中庭と主屋を守る。このように、人の行為をつなぐ空間と、地域と家をつなぐ構成を連続的に計画し、多層的なプログラムをフラットに、さりげなく解決しようと試みている。

建物がなぜそこに置かれるのか?なぜそこに置くべきなのか?という「配置の基本的解釈」とでもいうべきことを疎かにせず、家屋を地域環境を長きに渡り形成・持続してきた風土につなげることを大切にして計画した。

2017年施主が他界され本案は凍結。ご主人から奥様へ託された実家再建の熱意を受け、二人暮らしのプログラムから単身の住まいにプログラムを変更し規模を縮小する方向でOSK2.0(後の休耕地の家)へと継承された。

計画年:2016~休耕地の家に移行
場所:宮城県東松島市
用途地域:指定なし
建蔽率/容積率:28.03% (70%)/24.05% (200%)
防火指定:指定なし(法22条指定区域)
工事種別:新築
用途:分家住宅(在宅ケア+地域交流拠点)
敷地面積:400.01sqm
建築面積:113.93sqm
延床面積:96.19sqm
構造:木造(在来工法)
基礎:布基礎
階数:地上1階
最高高さ:4.850m