1次審査
有機EL照明(OLED)と太陽光発電パネルを用いた光のパーゴラ(夜のパーゴラ)の提案である。嗜好性の強いプロダクトよりも、より公共性の高い利用と利便性を目指したいと考えた。ガラス基板に透過型の太陽光発電とOLEDをバインドし、より薄く器具の突出や配線のないフラットな発光する庇をつくる。OLEDモジュールはできるだけ透明な発光層とし、昼間は普通のガラスの庇のようなふるまいを見せるが、夜間は細かな光の帯が浮かび上がる。今回はパネルの発光層の塗布パターン、サイズをデザインしながら、まだまだバスを待つ環境が整備されていないことに注目し、バスシェルターへの利用の可能性を提案しているが、薄く軽やかな光のパーゴラは公園の休憩所や建物のエントランスの庇などへの応用が可能である。
2次審査
より近い発光イメージモデルと利用環境を想定した施設用途モデルを提出し、単に照明器具としての開発に留まらず、公共空間や植物工場などの生産施設への建材としての利用を想定し、広い生産・普及イメージを「光源を実装したガラス建材」として提案した。個人消費としてもLEDの普及が先行している中、OLEDが追いつき、追い抜くというロードマップではないが、将来的にはそれぞれの長所を活かし、適材適所住み分けがなされていくと予想されている。3.11東日本大震災を機に新エネルギーの議論が各方面で活発化し始めている。OELD照明開発・販売の合弁会社設立や、山形県の有機イノベーションセンター設立なども、今後OLEDの市場拡大に向けて緩やかに加速していく兆しが生まれている。皮肉にも本考案は3.10に受賞、翌日東日本大震災が発生した。提案者自身も故郷が被災し、家屋も流失するという当事者となった。大停電の暗闇の中、安否確認に向った3.12、発送電分離の議論もあるが、都市が暗闇に包まれることなく安心感が確保できる都市基盤の必要性をあらためて強く感じた。もはや大震災が引き起こした事態が日常となった今、この照明が復興のひとつとして役に立たないものだろうかと考えている。
計画年:2010~2011
用途:公共空間・施設照明
制作年:2011.7~2011.9
Night pergola prototype展示
場所:CEATEC JAPAN 2011 NEDOブース
SEMICON JAPAN 2011 NEDOブース
用途:公共空間・施設照明
規模:WDH=1.08M×1.33M×2.3M
仕様:SUS製構造フレーム+透明強化ガラス+OLED光源ユニット
色温度:3000K
発光効率:30lm/W(1枚あたり)
演色評価指数:Ra92
水銀レス
協力企業
日本街路灯製造(株)
パナソニック電工(株)
パナソニック出光OLED照明(株)
Light Bridge Association JAPAN NPO
その他:NEDO賞受賞作品プロトタイプ1号
実用化協力企業募集中
有機EL照明デザインコンペ2010 NEDO賞(新エネルギー・産業技術総合開発機構賞)
作品展示:ライティング・フェア2011(幕張メッセ)
審査員(敬称略、順不同)
大谷 義彦(照明学会 有機EL照明ガイドライン作成委員会委員長・工学博士)
城戸 淳二(山形大学 大学院理工学研究科 有機デバイス工学専攻 教授)
長根 寛+小野さやか(東京デザインパーティ/2008年度最優秀デザイン賞受賞者)
落合 勉(Light Bridge Association JAPAN NPO 理事長)
Night pergoraのモックアップ
パナソニック(株)様、パナソニック出光OLED照明(株)様からご提供のOLEDモジュールを利用することを前提に、日本街路灯製造(株)様の協力の元でイメージを喚起するモックアップを作ることになった。「CEATEC JAPAN 2011 NEDOブース」、「SEMICON JAPAN 2011 NEDOブース」にて展示された。
モジュールサイズが100mm角という製品縛り(2010年時点の技術限界)があったため、本提案のイメージパースや模型写真のような短冊状の繊細な光や透過性の効果、上面の透過型太陽光発電などの提案内容は当然、技術上の困難さや制約があるため、あくまでも商談に訪れた各企業への喚起目的のイメージに留まっている。ペロブスカイトや透過型OLEDが発展し、バインドされた「国産発電発光ガラス建材」が普及する日が来ることを楽しみにしている。