





サン・ロレンツォ教会の未完成ファサードは、歴史の痕跡をとどめながらも、現代技術によって新たな空間へと昇華されるべき存在である。本提案は、石積みの凹凸をスキャン技術でデータ化し、それに精密に適合するアクリルブロックを用いて構成する。ブロックは天空に向かうにつれ奥行きを浅くし、光を反射することで空を映し出し、広場対面の町並みと視覚的に重なり合う効果を生む。過去の組積造を現代的な組積造で覆うことで、歴史と未来が交錯する建築体を形成する。
入口付近にはアクリルベンチとオープン書架を設置し、人々が憩い、学びの場として機能させる。夜間はLED照明がブロックを下方から照らし、広場に光のスクリーンを生み出すことで、都市に新たな対話を生む装置となる。素材、光、時間を通して建築を再構成する本計画は、歴史の継承と現代の介入を融合させる試みである。
計画年:2003年
場所:イタリア、トスカーナ州フィレンツェ市
工事種別:ファサード改修
用途:教会